研究概要 |
本研究を実施するに際して,まず最初に研究代表者が豪州のマックォ-リ-大学を訪問し,同大学のハリソン教授とマッキノン準教授から研究資料の提供ならびに本研究に対するレビューを受け、両者の協力と研究指導のもと,米国,英国,豪州,シンガポール,香港,台湾の管理会計について,それらの研究・実務に関する国際的な比較研究のための基礎づけを行い,国際比較研究のための枠組み,特に比較文化論的な管理会計研究の枠組みを構築するよう研究を進めた。そのために,比較文化研究と各国の管理会計研究・実務に関する文献・資料を収集するとともに,既存の諸研究成果を体系的に整理するよう努力した。しかし、この作業には,かなりの期間に亘って,相当膨大な数の資料・文献の収集,整理,分析が必要であり,現在もその作業は継続している。本研究に一応の区切りをつけるため,本年3月末にその研究成果を取り纒め,拙著『行動的予算管理論』の増補版として今秋出版の予定である。 また,国際比較研究のための枠組みを体系的に整理した後,わが国企業の管理会計・原価管理の実務についても,主に住友電気工業々(株)を対象として聞き取り調査を実施した。同社においては,30年以上も前に構築した伝統的な管理会計システムの見直し作業が行われており,国際化・情報化に即応した,企業グループを前提とする戦略指向の管理会計システムを現在模索中であることが明らかになった。わが国企業が新しい管理会計システムを構築する際の示唆となる考え方や技法については,諸外国の文献研究をもとに,現在複数の論文を執筆中(既に一編は現在投稿中)である。これらの論文は,順次,大学の諸紀要において発表の予定であり,一番早いものは今年の6月末頃に刊行される予定である。 また,実態調査の結果については,可能であれば統計的なデータ分析を行い,もし有意な結果が得られれば,近い将来,これらの諸研究成果を調整し,統合する形で,日米豪の3カ国を中心とした環太平洋諸国における管理会計の,国際的比較研究の基礎づけを行いたいと考えている。
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