研究概要 |
当研究ではFrobenius核の存在定理の群論的証明について探求した.最終的な結果には至らなかったが,新たな展開を示唆すると思われる視点を見いだすことができた. 有限群Gの部分群H(≠1,G)は任意のg∈G-Hに対してH∩H^g=1を満たすときGのFrobenius部分群であるといわれる.このとき N=(G-∪_<g∈G>H^g)∪{1} とおけば,(|N|,|H|)=1かつ|N|=|G:H|であることが導かれる. 1901年Frobeniusは複素指標の理論を用いて,Nを核とするGの複素表現を構成し,NがGの正規部分群であることを示した.NはFrobenius核と呼ばれる.その後,その群構造の単純性からFrobenius核の存在定理の群論的な証明が試みられたが,完全な証明には至らず今日に至っている.ただし,種々の条件を付加した場合には簡潔な存在証明が得られており,指標を用いない証明の存在を暗示している.一方,有限群Gの自己同型σとGの基aにたいして X(a)={g^<-1>ag^σ|g∈G} とおけば∩_<g∈G>X(1)^gはGの正規部分群となる.さてFrobenius部分群Hが偶数位数の場合のFrobenius核の存在定理の群論的証明は古くから知られていたが,これは上の事実でσをHの位数2の元によるGの内部自己同型として適用すれば ∩__<g∈G>X(1)^g⊇N が得られることを示したものに他ならない. 上述のことは『Frobenius核の存在定理』が『(内部)自己同型の問題』として把握できること,したがって自己同型についての諸結果が適用できることを示唆するものであり、この方向からの新たな展開が期待できる.
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