R^4-{0}において定義されるTaub-NUT計量を2つの未知関数を含む形で一般化し、その測地流のハミルトン力学系の簡約化で得られるT^*(R^3-{0})でのハミルトン系において、すべての有界軌道が閉じるように2つの未知関数を決定するという手続きで多重Kepler系を発見した。逆に、Taub-NUT計量の一般化も図った。この一般化Taub-NUT計量がEinstein計量であるための必要十分条件も計算した。この力学系はT^*(R^3-{0})で定義される古典力学系で、多重度を表す正の実数をパラメターとしてもち、それが有理数ならすべての有界軌道は閉じるが、無理数なら軌道は閉じない。また、閉軌道の回転数はその有理数で決まる。多重Kepler系は、普通のKepler系を含む無限系列のKepler型力学系を与えるという意味で注目に値する。 さらに、多重Kepler系を量子化し、そのエネルギー固有値を見出し、多重Kepker系の多重度パラメータが有理数か無理数かにしたがって固有値の多重度(縮退度)に違いが現れることも証明した。このときの量子化作用素は、通常信じられているようなラプラス作用素の-1/2倍ではないが、一般化Taub-NUT計量がEinsteinならば通常の作用素に一致する。本研究で採用した作用素が自然なものであることを示すために、トーラス量子化を行って、この作用素から得られるエネルギー固有値と、トーラス量子化で得られるエネルギー固有値とが一致することを示した。 一方、力学系とリーマン幾何学の話題に関連して、非ホロノ-ム拘束をもつ力学系とサブリーマン幾何学との密接な関連を示すプレートボール問題を研究し、いわゆるベリ-位相を調べた。これは、5次元空間内の完全可積分でない2次元の分布に計量を与えてその測地線を研究するものである。具体例ではあるが、今後の発展が期待できる.
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