研究概要 |
スピン構造をもつコンパクト連結リーマン多様体上のDirac作用素にたいする等スペクトル問題を考え新たな知見を得た。(2n-1)次元球面空間形Γ\S^<2n-1>でスピン構造をもつものを考える。これらのクラスの中でDirac作用素で等スペクトルをもつが距離同型でない対を構成することを試みた。C. Barは基本群がメタ巡回群であるような球面空間形のクラスでそのような例を構成している。qを11以上の素数、qo=(q-1)/2, Lo (q, n)をレンズ空間{L (q : p_1, p_2,…,p_n)|Pi≠pj (mod q) (i≠j)}の距離同型類とする。このとき(q-6)次元のレンズ空間の族Lo (q, qo-2)に属するふたつのレンズ空間はラプラス作用素で等スペクトルであって距離同型でない例となっていた。C. BarによるDirac作用素のスペクトルに付随したPoincare級数を用いて10<q<30であるqにたいし(q-6)次元のレンズ空間のクラスLo (q, qo-2)を調べた。結果はq≠23のときLo (q, qo,-2)は互いにDirac等スペクトルでないことがわかった。一方3つのレンズ空間L(23 : 1, 5, 2, 10, 4, 20, 8, 16, 11), L(23 : 1, 5, 2, 10, 4, 20, 8, 17, 11), L(23 : 1, 5, 2, 10, 4, 20, 17, 16, 11)はDirac等スペクトルであることがわかった。これらのレンズ空間は17次元である。これにたいしC. Barの構成した基本群がメタ巡回群である球面空間形の例での最低次元は19次元であった。今後の研究の課題としては等Diracスペクトルをもつが距離同型でないレンズ空間の例を無限個構成することを目指す。
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