研究概要 |
1.作用素環(von Neumann環とC^*環)において,非可換力学系と非可換エントロピー論を研究し,量子格子系を一般化した非可換力学系において,インタラクションが与えられたときの平衡状態の各種の特徴づけ(KMS条件,Gibbs条件,変分原理など)を考察した.さらに,この力学系においてJones指数理論と関連させて,相対エントロピー,力学的エントロピー,位相的エントロピーなどのエントロピー論を研究した. 2.Von Neumann因子環とその部分因子環の対の分類では,OcneanuおよびPopaにより導入されたスタンダード不変量(パラグループとも呼ばれる)が重要である.因子環-部分因子環の対N⊂Mとその上の群Gの作用が与えられたとき,N⊂Mと接合積の対N×G⊂M×Gのスタンダード不変量を比較して研究した.これを応用して,II型とIII型のスタンダード不変量の違いを考察した. 3.離散群やコンパクト群の表現環の一般化であるフュージョン環上のランダム・ウォークを研究し,部分因子環の研究に応用した.Popaにより導入された部分因子環の(strong)amenabilityの研究には,部分因子環に付随するフュージョン環上のランダム・ウォークのエルゴード論的およびエントロピー論的な考察が不可欠であることを明らかにした. 4.非可換確率論の新展開である自由確率論と自由エントロピー論を研究した.古典論(通常の確率論とBoltzmann-Shannonエントロピー)との対比を重視し,自由確率変数への漸近的近似としてランダム行列のモデルを駆使することにより,自由確率変数に関する極限定理(特に自由エントロピー型の中心極限定理),自由エントロピーの変分問題,自由エントロピー次元,自由確率論の作用素環論への応用などを考察した.
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