研究概要 |
ヒルベルト空間上の一対の非負定値有界線形作用素に対して知られている算術平均と幾何平均の間の不等式やそれに関連して安藤-久保の作用素平均の一般的な不等式理論に対して,作用素の数を増したとき(3以上に),それらの間の電機回路的な組み合わせによって得られる不等式が予想されている.即ち,2個の作用素の場合からにn個の作用素の場合へと帰納的に一般化して得られる対称関数平均と呼ばれる作用素平均に対して電機回路的に自然な作用素不等式が予想されている. ヒルベルト空間上の非負定値有界線形作用素の間の予想されている不等式の内,比較的作用素の数の小さい作用素不等式に対して,電流の分岐をモデルとする一種の極値問題の解として作用素不等式を捉え直し,その双対問題を考察する事で行列の固有値問題に問題を還元した後,数式処理ソフトの利用など多様なアプローチを試みた. 不等式に対応する行列はサイズが巨大になることが知られているが,上記の数式処理などを利用した試行の結果としてその行列の具体的な形を得る事が出来,また,その固有値及び固有ベクトルを計算することが出来た.これにより,5個迄の作用素の間に成り立つと予想されていた作用素不等式は総て成立する事が証明出来た. また,作用素に関する幾つかの代数的特徴付けに関する結果を数式処理を用いて求める事が出来,これをWebページとして作成し,公表した.ページ作成に当たっては,画像処理向きのワークステーションを用いてネット・サーファーの注目を引くようにした.
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