研究分担者 |
河添 健 慶應義塾大学, 総合政策, 助教授 (90152959)
下村 俊 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (00154328)
国松 昇 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70051662)
谷 温之 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90118969)
菊地 紀夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80090041)
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研究概要 |
多くの成果があったが,ここでは特に,調和解析的手法による,測定の概念を明確化について述べる.結果的には調和解析の枠内にはおさまらない展開になったが,目的はほぼ達成した.量子測定理論は完成されているので,古典システムに対する測定理論が興味の対象である.「ボルンの量子測定理論」をC^*-代数の言葉で記述して,特に,可換の場合を古典測定理論として提案するというのが,基本的アイデアである.したがって,我々は古典力学は「ニュートン方程式」と「古典測定公理」からなると考える.ここで,「測定公理」から得られた結果をいくつか列挙してみる. [1].量子システムにおいては,三段論法(A⇒B,B⇒CならばA⇒C)は成立しないことは良く知られている.しかるに,古典システムにおいては,三段論法は正しいことが証明できた.また,A⇒B,B⇒Cならば,ある意味で,C⇒Aというような結論も言える.種々のロジックを測定論の中の定理とみなすという考えは,ロジックを現実に適用する際の正当性を保証するという意味で本質的である. [2].「測定誤差」についての一般論を展開できる.これによって,Heisenbergの不確定性関係の定式化が可能になった.また,古典系に限るならば,この一般論は統計学との関連において重要である。 [3].粒子のtrajectoryの概念の定義を得ることができる.したがって,何故,古典システムにおいては,trajectoryが中心的なのか?等に答えることができる. [4].情報についての詳細な議論ができる.情報は本来的には,測定によって得られたのだから,この観点から情報理論を構築することは自然である。 [5].古典力学から統計力学への移行がかなり滑らかにできる.「可換測定公理」はすでに「確率」を内蔵しているのだから,このことは,当然である. [6].システム理論は古典力学をモデルとしている.したがって,測定の概念を自動的にシステム理論へ導入することができる.このことは,ファジィ制御の定式において本質的である. このように,我々の方向はかなりの将来性を持っていると確信している.研究方法としては,量子系と古典系の相互を常に想定して,たとえば,量子系で得られた結果を古典系に焼き直す等の方法がかなり有力であった.
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