研究概要 |
本科学研究費補助金により得られた主な結果を以下に列挙する. 1.エルゴード的なマルコフ連鎖の時間平均利得最適制御問題の最適解の存在を示すのに,Borkarらの用いたマルチンゲ-ルのある種の大数法則を上の目的に適するように改良した.その結果,Borkerらにおいては制御マルコフ連鎖のコンパクト集合への再帰時間の2次モーメントの有限性の下で示された最適解の存在定理が,ほぼ1次モーメントの有限性のもとで示すことができ,Borkarらの必要条件と極めて近い形にすることができた. 2.主として状態空間が1次元のマルコフ連鎖のエルゴード性およびその収束の速さに関するTweedie,Thorissonの方法を多次元の状態空間を持つ場合に拡張することを試みた.特に,Borovkovの多次元マルコフ連鎖について,エルゴード性のための負-ドリフト条件と絶対モーメント有限性条件があれば,Tweedie-Thorisson型の定理が成り立つことを示した. 3.正則断面曲率が一定の概ケーラー多様体における曲率テンソル表示式を用いて,RK-条件を満たす4次元コンパクト正則断面曲率一定の概ケーラー多様体はケーラー多様体であることを示した. 4.Abikoff-Haasによる二つの定理において,"n次元的"という仮定がなければ定理は成り立たないことを,「4以上のすべてのnに対し,そのあらゆる有限生成部分群が離散でありながら,非離散であるような非n次元的Moebius群が存在する。」ことを示すことにより明らかにした。
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