研究概要 |
2年継続の研究として,生活に身近な流れを対象としたパソコンによる計算の実際的運用に力点を置いた次の研究を押し進め,以下に述べるような研究成果を得ることができた. 1.複雑な領域形状での生活環境流れの計算に適した手法として,有限要素法を選び,三角形一次要素を用いた分離型解法,およびテイラー・ガラーキン法で支配方程式を離散化する. 2.非圧縮性粘性流体の流れ,浅水域における長波の伝搬・流動のコンピュータシミュレーションプログラムを検証し,利用者の意見を取り入れた改良を行う. 3.圧縮性粘性流体の流れ,および低層大気圏内の空気の流れを記述する方程式の有限要素法による離散化を,パソコンシミュレーションに適した形に改める. プリ・ポストグラフィック処理機能付きのパソコンプログラムを開発し,そのコードを公開する. これらについて,次の実績をあげることができた. 1.初年度において一応の開発を完了した非圧縮性粘性流体の流れ,浅水域における長波の伝搬・流動のパソコンによる水環境流れ解析のためのシミュレーションプログラムの検証を実際の運用を通して続け,広く利用者の意見を取り入れて,一層使い勝手が良くなるように改善した.成果を成書に編集し,共同研究者と連名で出版した. 2.偏微分方程式としては同じタイプに属する圧縮性粘性流体の流れ,および低層大気圏内の空気の流れを支配する方程式の有限要素法による離散化を行った.低層大気圏内の空気の流れについての成果を学術論文にまとめ,国際雑誌に投稿した. 3.環境問題の数値シミュレーションにおいては,しばしば境界の位置を作為的に設定し,与えられた偏微分方程式の初期値・境界値問題が考察される.しかしながら,境界条件や初期条件は本来,未知の場合が多い,適切な境界条件と初期条件を推定して,方程式に与えることが数値計算結果の成否を決定する.殊に,低層大気圏の空気の流れの開境界条件については,特性曲線を利用した上流境界条件が良好な計算結果を与えることが分かった.
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