研究概要 |
本研究において取り上げた課題は A) 複素座標スケーリング法を用いて様々なシステムの共鳴状態の分析を行う、また、 B) 複素座標スケーリング法の方法論的研究をおこない、共鳴状態を分析するために複素座標スケーリング法の適用範囲を拡大する、 ことである。これらの課題に対して、当該研究期間において以下のような研究成果、実績を得た。 A-1 中性子過剰核の研究 (i) コア+n+n模型による中性子ハロー核の研究:^9He(=^8He+n),^<10>He(=^8He+n+n),^<10>Li(=^9Li+n),^<11>Li(=^9Li+n+n)の結合エネルギー、共鳴状態の分析を行い、中性子間の対相関が重要な役割を持っていることを明らかにした。 (ii) 中性子対相関とs-,p-軌道の逆転問題:^<10>Liについて、[^9Li+n]+[^9Li^*+n]模型による研究を行った。 (iii) 鏡映核の共鳴状態間のエネルギー・シフト:非束縛状態のエネルギー・シフトはThomas-Ehrman効果に加え、バリア効果による新たな効果が大きいことを指摘した。 A-2 中間子に対するクオーク模型:ψ/J中間子の質量準位と崩壊幅の振舞がクオーク間相互作用から許容OZI崩壊チャネル効果を考慮することによって説明できることを示した。 A-3 重イオン散乱における分子的共鳴状態:^<12>C+^<12>C系の多重共鳴構造に対するMorseポテンシャルを用いた振動・回転描像の問題点を論じた。 B-1 共鳴状態における物理量の期待値、行列要素の計算法:複素座標スケーリング法による計算法を確立した。 B-2 共鳴状態の遷移強度:非束縛状態から束縛状態への遷移確率における共鳴状態からの寄与と連続状態からの寄与に分解することに成功し、共鳴状態からの寄与が非常に大きい場合が存在することを示した。 B-3 拡張された完全系でのグリーン関数:複素座標スケーリング法を用いて拡張された完全系の有効な記述を得ることに成功した。
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