研究概要 |
1)中間子発生エネルギー領域での有効相互作用:核子以外の自由度をすべて消去する従来の方法に対して、孤立した1核子が関与する反応過程を温存し、完全に仮想過程である過程を消去することにより、低エネルギーから中間子発生、バリオン励起を含むエネルギー領域での核構造、核反応を記述する有効相互作用の定式化を行った。その結果、1中間子交換力、静的2中間子交換力は従来の理論結果と同一であり、さらにバリオン-バリオン間、およびボゾン-バリオン間の核力を導出し、これに基づいて、原子核における有効電磁相互作用を導出した。その結果、バリオン励起状態の関与しない1中間子交換流は従来の理論と同一であり、バリオン励起状態を含む交換流は、バリオン励起状態間の核力と矛盾なく導出され、バリオン励起、中間子発生を含む電磁相互作用による核反応の記述を可能とした。この枠組みにおいて、パイ中間子-核子散乱、および光パイ中間子発生反応を分析し、実験とのよい一致を得た。この模型は、原子核反応における基本相互作用として重要な基礎付けとなる。また、閾値近傍でのp+p→p+p+π^0反応をカイラル摂動論により、上記の観点から考察を行った。現在、(π,η)、(γ,η)反応を解析中である。 2)パイ中間子-原子核反応:電磁相互作用による原子核の応答の研究に不可欠な情報をえるために、第1段階として(3,3)共鳴領域でのパイ中間子-原子核反応の考察を通して、アイソバ-の平均場の研究を行った。ここでは、従来のアイソバ-空孔模型を拡張し、開殻原子核における反応の記述を可能にする定式化を行い、p殻原子核である炭素12,13、窒素15,酸素16におけるパイ中間子弾性散乱、電荷移行反応、分解能の分析を行い、アイソバ-の複素平均場が、スピン軌道相互作用の外に、アイソスピン依存項を含むことを明らかにした。とくに、電荷移行反応断面積の絶対値、分解能の符号をはじめて説明することに成功した。目下、この成果をもとに、光パイ中間子発生反応の研究を続行中である。 3)カイラル・クォーク・ソリトン模型によるバリオン構造:高運動量移行反応において、ハドロン有効相互作用に含まれる形状因子の詳細は不可欠である。その第1歩として、QCDの特徴を表現するSU(3)カイラル・ソリトン・クォーク模型によりバリオンの磁気モーメントの研究を行った。SU(3)のやぶれとしてu,dクォークとsクォークとの質量差を取り入れ、8重項については実験値とよい一致を得た。また、10重項にたいしては、他の格子ゲージ理論と同様な結果を得た。また、Godfried和則についても実験と満足すべき一致を得た。
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