研究概要 |
閉じた多様体上での量子化および量子論の問題は、これまで僅かにDiracによる正準形式の拡張に基づく研究があるのみで、より基本的な研究は最近Landsman-Lindenおよび我々により独立のアイデェアのもとに展開された。この種の量子化には、ゲージ構造が自動的に内包されているという注目すべき性質があることが示され、昨年度までにわれわれはD次元球面上の量子化において誘発されるゲージ場の具体的な形を導いた。これと関連し、より広い視点から眺めるために、今年度の研究において、グラスマン多様体(U(n+m)/U(n)×U(m)上の量子化およびそれに伴い誘発されるゲージポテンシャルを考察した。この種のゲージポテンシャルは、ここでのYang-Mills方程式の満たしていることは分かっているが、任意のn,mに対する一般形を求めることは技術的に容易ではなかった。そのため我々はある種の積分表示法を開発して、この表示のもとでゲージポテンシャルの一般形を導くことに成功した。とくに、n=1の場合は任意のmに対して積分を完全に行うことができゲージポテンシャルの具体的なかたちが与えられた。これを導く技術および結果は、7月にドイツ・ゴスラ-で開かれた「21回物理学における群論的方法に関する国際会議」で発表して、関連分野の出席者の関心を引くことができた。この研究は数学者にも興味があり、セミナーでの何回かの講演に加えて彼等と討論の機会をもつた。目下、細かい点の詰めを行っている。同様にしてカイラル多様体上の量子化とそこに現れるゲージ構造の研究をも手掛けてきたが、これは完成の途上にある。この他に、幾何学的にきれいな形をもたず群の誘導表現を直接応用できない歪んだ多様体上の量子化に関しても、我々はゲージ構造の発現に加えていくつかの興味ある事実を見つけ、それらを総合する仕事も進めている。
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