研究概要 |
新しい磁気光学特性を発現する物質をめざして、疑一次元ハロゲン架橋Pt錯体に磁性イオンを導入することをこころみた。その結果、Ptイオンの半分をCuとNiに置き換えた錯体(【Pt (chxn)_2X_2】【M (chxn)_2】X_4 : M=Cu and Ni, X=Cl, Br and I)を合成することに成功した。組成分析およびX線回折の結果から、これらの物質は、-Pt-Cu-Pt-Cu-あるいは、-Pt-Ni-Pt-Ni-といった一次元鎖からなる錯体であることが確認された。Niイオンは、2価であるが、強い配位子場のために低スピン状態をとっておりスピンは存在しない。そこで、Cuを導入した錯体について基礎的な光物性と磁性を調べた。 【Pt (chxn)_2X_2】【Cu (chxn)_2】X_4 (X=Cl, Br and I)錯体について光吸収スペクトルを測定したところ、Cu^<2+>→Pt^<4+>の電荷移動遷移に対応した吸収が4eV以上の紫外域に存在することがわかった。また、2eV付近にCuのd-d遷移に対応する吸収が観測された。スピン帯磁率の温度変化から、Cuの局在スピン間の相互作用はきわめて小さく、比較的低磁場でスピンの向きを制御できることが確かめられた。これらの錯体について光誘起吸収を測定したところ、可視領域のスペクトルに変化がみられた。磁場下での光誘起吸収の測定は、今後の課題であるが、Cuスピンを磁場によって制御できることを考えれば、光キャリアとCuのスピンとの相互作用を通じて、大きな磁気光学効果が期待できる。
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