アモルファス物質の光照射効果には、(1)蛍光、(2)欠陥生成、(3)構造変化の3現象が通常観測される。また結晶体を高密度に励起することによりアモルファス化することが知られている。これらの現象の機構について、いくつかのモデルが提案されているが、いまだ確立されていない。 次の3課題につき研究を行った。 A. アモルファス物質の電子励起による欠陥生成機構 欠陥生成が石英結晶でのみ起こりアモルファス石英で観測されないことから、アモルファス物質の特徴である局所構造の変化と欠陥生成との相関を計算機シュミレーションにより明らかにすることを試みた。その結果、アモルファス石英中の局所構造の著しく乱れた場所に生じた励起子が欠陥に変換すると結論した。 B. アモルファス物質の構造変化の機構 構造変化に伴う光吸収変化、体積変化などのこれまでの実験結果を解析し、構造変化が、緩和励起子が基底状態へ遷移した際、エンタルピが低下するよう変化するためであると結論した。 C. 高密度電子励起によるアモルファス化の機構 種々の物質について、高エネルギー重イオン照射による飛跡形成を誘起する局所電離密度のしきい値を解析した結果自己捕獲励起子の高密度生成が、飛跡形成の原因であると結論した。この結果を飛跡形成の自己捕獲励起子模型として発表した。
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