研究概要 |
強い相関が働く電子系では多彩な物理現象が出現する.超伝導,重い電子系,近藤半導体などがその一例である.然し乍ら,個々の現象が連携して起こる事象,例えば重い電子系が何故超伝導になるかの問いに関しては,発生機構の解明は勿論,その指針となるギャップの対称性すら不確定のままである.重い電子系と近藤半導体の関連はどうであろうか.CeRhSbはCeNiSnと同様小さなギャップをもつ近藤半導体として脚光を浴びていたが最近は両者とも半金属であるとされ混迷の度を増している. 以上の状況に鑑み,裾野を広げたテーマで事の本質に切り込む研究を成し,併せて日本の研究蓄積を開花させる事が切に望まれている.近藤半導体にあっては周辺の関連物質の物性を先ず明らかにし電子構造に関する輪郭の取得が不可欠である.筆者はCeNiSnに対してCePdSnの研究を行った歴史がある.以上の背景のもと,本研究では近藤半導体を採り上げ具体的な物質群としてCeRhX (X=Bi, Sb, As)に着目した.CeRhBi, CeRhAsの相の存在は筆者の研究によって初めて確認されたものであり本研究の大きな成果である.以下に我々の研究成果の概略を示す. 成果の概略 Bi, Sb, Asは周期表でV族に属しプニクトゲン元素と呼ばれている.CeRhBi, CeRhSb, CeRhAsが同型の結晶構造をとることが判明し,物性を支配する電子数も同じでバンド構造の骨格も類似と考えられる.一方結晶の体積はBi→Sb→Asの順に減少しf-電子と価電子との混成の強度が順次増加することが期待できる.この系の電気的性質及びフェルミエネルギーでの状態密度に関する情報は多結晶での比熱測定から得られ,CeRhBiのフェビ-フェルミオンからCeRhAsの半導体(電子比熱γ〜0)への遷移が確認された.CeRhAsのギャップは圧力下で減少し,もう一方の近藤半導体Ce_3Pt_3Bi_4とは逆である.即ちバンド計算の結果に如何に相関を取り組むべきかの長年の命題に応える格好の舞台を提供した.
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