研究概要 |
超伝導体の厚さを固定し、磁性層の厚さdf を厚くしたとき、超伝導体臨界温度Tcは十分に薄いdfの領域では単調減少、十分に厚い領域では飽和する実験結果がある。具体的な数値計算を行い、実験に一致する理論的結果を得た。また、磁性を特徴づける交換ポテンシャルが大きな場合、Tcはdfの単調関数ではないことを示した。これは、対関数を波動関数に、磁性層を正の有限なポテンシャル・エネルギーの領域に、臨界温度からの温度差をエネルギー固有値に、それぞれを対応させたシュレ-ディンガ方程式を考えると、Tc の厚さ依存性が単調変化しない領域では波動関数を狭い領域に閉じ込め、運動エネルギーを大きくさせ、臨界温度Tcを減少させること理解される(Czech.J.Phys:46,583(1996))。 層状物質の特性は超伝導結合定数・状態密度・拡散係数・交換ポテンシャルだけでなく、デバイ振動数もある。しかし、層間でのデバイ振動数の差異が超伝導特性に与える影響を調べた理論的研究はこれまでに無かった。この効果は超伝導結合定数と似た影響をもたらし、引力相互作用の大きさが超伝導結合定数であり、引力相互作用のゼロでない範囲がデバイ振動数であることを数値計算で示した(J.Phys.Soc.Jpn:66 3219,(1997))。 デバイ振動数の効果が超伝導結合定数で定性的に表されるので、状態密度・拡散係数・交換ポテンシャルが異なる磁性層を含む超格子に対して、Tc、臨界磁場Hc2および対関数の温度依存性・磁場層厚依存性など磁気的性質についての研究を行った(Phys.Rev B:(1998)印刷中) また、これまで得られたとは異なる臨界温度の磁性層の膜厚依存性を観測した実験結果が発表された。これは磁性層間で、対関数の位相がpi異なることによると考え現在研究を行っている。
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