研究概要 |
1.かごめ格子反強磁性体ジャロサイトRFe_3(OH)_6(SO_4)_2(R=NH_4,Na,K)の磁性とスピン揺動の研究 (1) SQUIDを用いて帯磁率の測定を行い、50K付近において、かごめ格子反強磁性体として初めて逐次相転移をすることを発見し、この相転移が磁気的なものであることをX線回析と核磁気共鳴(NMR)法で確認した。 (2) 低温において磁場5Tまでの磁化曲線を測定し、帯磁率測定値における固有の帯磁率と不純物帯磁率の寄与を分離し、固有帯磁率の温度変化からキューリ常数、ワイス温度を求めた。 (3) 帯磁率の磁場中冷却効果の測定からこれらの逐次相転移が他のかごめ格子系反強磁性体で観測されているようなスピングラス転移ではないことを確認した。 (4) ^1H核NMR共鳴磁場スペクトルの測定から、かごめ格子面内のOH基の位置においては高温側転移点TN_1から内部磁場の増大が観測され、磁気秩序が発達していることが確認された。ところが、かごめ格子面間の^<23>Na核と^1H核位置においてはTN_1で異常は見られず、低温側転移点TN_2から小さい内部磁場の発生が観測された。これは非常に特異な磁気転移であり、カイラリティの変化を伴う逐次相転移が起こっているのではないかと考えられる。今後さらに中性子回折や比熱測定の実験が必要であり、現在計画中である。 (5) スピン格子緩和時間T_1の測定をおこなった。緩和率1/T_1はTN_2で異常を示し、中間相における緩和率は常磁性相と比べて大きな変化は見られなかった。常磁性相の緩和率は通常の磁性体とは明らかに異なる温度依存性を示しており、かごめ格子反強磁性体固有の揺らぎが存在することを示唆している。低温相においては核磁化の回復は非指数関数的な振る舞いを呈し、緩和率は温度低下と共に急激に減少する。かごめ格子反強磁性体に固有な多重縮退、零モードスピン波が緩和に反映していると考えられる。 2.SrCr_8Ga_4O_<19>のNMR実験 かごめ格子反強磁性体SrCr_8Ga_4O_<19>のGa核NMR信号を高磁場と高感度NMR装置を用いて見いだした。スペクトル、緩和時間の測定を今後行う予定である。
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