研究概要 |
1.M/Au(M=Fe,Co,Ni)金属人工格子のAu中に^<119>Snを挿入した試料を作製し、Snメスバウアスペクトルの内部磁場の大きさから各人工格子中のAu層の磁気分極の様子を調べた。分極の大きさはCo/Au>Fe/Au>Ni/AU(Au膜厚≦20Å)、Fe/Au>Co/Au>Ni/Au(Au膜厚>20Å)である。強磁性層からAu層への分極の染み出しの挙動は各系で異なる。Fe系では界面からAu層内部に向かって単調減少する。Co系では、Au層膜厚がある閾地までは分極の減少は遅いが、閾地以上の膜厚では突然分極が膜全体にわたって減少する。Ni系では分極の大きさは小さいがほとんど減少しない。強磁性層の磁化の温度変化とAu層の分極の温度変化に比例関係はない。Au層の分極の方向については、磁化に対して平行、反平行の両成分があることが確認され、分極が振動的であることが示唆された。 2.Snと挿入した場合と相補的な知見を得るため、Co/Au系に関してAu層に^<57>Feを挿入した金属人工格子を作製し、Feメスバウアスペクトルの測定からAu層の磁気分極を調べた。Feは磁気モーメントを持つためスペクトルの解釈はSnの場合ほど簡単ではないが、Au層の磁気分極が挿入したFe磁気モーメントの超常磁性的揺らぎを抑えると仮定してスペクトルを解析すると、定性的にSnを挿入した時と一致する結果を得た。 3.磁化曲線が典型的な反強磁性間接交換相互作用を示す系と類似するCo/Au金属人工格子について、Co層に^<57>Feを挿入した試料を作製し、間接交換相互作用が存在するかどうか検討した。Co積層回数を変えた試料のFeメスバウアスペクトルと磁化測定による磁気異方性の測定から、飽和しにくい磁化曲線の原因は、間接交換交互作用ではなく、垂直磁気異方性と静磁エネルギーの競合であることが明らかとなった。
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