研究概要 |
炭化ホウ素化合物(ボロカ-バイド)RM_2B_2C(R:希土類金属,M:Ni,Pd,Pt)は超伝導転移温度T_cが比較的高い.層状の結晶構造を持つことと,Niに代表される遷移金属が含まれる点で非BCS超伝導体ではないかとの興味が持たれている.^<11>B NMRにより常伝導状態では電子相関が強く,Ni3dのスピン間には反強磁性相互作用が働いていることが示唆され,また超伝導状態ではBCS超伝導に期待されるコヒーレンスピークが観測されていないという報告があり,スピンゆらぎを媒介とした超伝導ではないかとの期待がされている.本研究ではYN_2B_2Cを作成し,常伝導状態,超伝導状態における^<13>C,^<11>B NMRを行い,以下の点を明らかにした. 1.常伝導状態においては^<13>C,^<11>Bのスピン格子緩和率T^<-1>_1とナイトシフトKはバンド計算で期待される状態密度を反映した2s電子とのフェルミ接触相互作用により説明された.別のグループにより観測された^<11>B NMRにおけるT^<-1>_1とKの温度変化は,反強磁性スピンゆらぎによるものではないかと示唆された.しかしながら本研究により^<13>C,^<11>BのT^<-1>_1とKの温度変化は静帯磁率の温度変化により説明された.すなわちスピンゆらぎによる緩和は観測されなかった.T_cが比較的高い原因として電子相関が強い系ではないかと期待されたが,NMRにより求められた値は通常の金属と同程度であることが示された. 2.超伝導状態における緩和率^<13>C T^<-1>_1の測定ではT_c直下でのコヒーレンスピークが観測され,また低温領域において超伝導ギャップがBCS理論の期待値に近い値を示す指数関数の振る舞いが観測された.これより炭化ホウ素化合物の超伝導はBCS理論で説明されるフォノンを媒介としたものであることが示された.
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