研究概要 |
1.新しい電子状態計算の定式化 密度汎関数理論におけるエネルギー変分原理を利用した「変分Augmented Plane Wave(VAPW)法」を定式化した.この新しい方法は,従来のAPW法に比べ,構成原子の非異種性や結晶異方性の取り扱いに大きな改良を与えると期待される. 2.VAPW計算コードの開発 バンド計算技法に関する資源を再活用しながら,VAPW計算コードを開発した.特にmuffin-fin(MT)ポテンシャルを数種のパラメターで特徴付け,変分計算の効率化を行った. 3.VAPW法の有効性の確認 VAPW法をアルカリ・テルル化物に適用した.MT半径を変分的に取り扱うことにより,非対称な多元物質に対する電子物性(凝集エネルギー,格子定数,体積弾性率など)の計算精度が大きく高められることを確かめた.また,共有結合のために異方的効果が大きいダイヤモンド構造をとるSiにVAPW手法を適用し,MT近似の範囲内でもセルフ・コシン,ステント計算による基底エネルギーを下げることができることを示した. 4.超イオン導電体の電子状態 逆蛍石構造を基盤構造としてもつ超イオン導電体,α-Ag_2Teに対してVAPW法に基づく電子状態の計算を広範囲に行い,超イオン導電性発現要因を電子論的に明らかにした. 5.今後の課題 (1)結晶異方性を考慮したクーロン積分の高精度計算コードの開発,(2)計算機特性(ベクトル,並列)に合わせたプログラムの高速化(特に行列対角化部分について).
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