研究概要 |
フェルミオンである電子の,粒子交換に対する波動関数の反対称性に由来する電子ビームの強度干渉効果を実験的に検証するのが本研究の目的である.このためには,安定な電界放出カソードの開発と,精密な同時計数システムが要求される.後者のために,同時刻のイベントとずれたイベントとを,高い精度で一様なビン幅で計数するコインシデンスのシステムを開発した. 昨年度の研究により,時間のビン幅の非一様性が残る原因が遅延時間を切り換える回路の特性によることが分かった.このため,回路に使用する論理素子を高速のものに交換し,回路パターンもより精細な形に作りなおした.これにより大幅な改善が見られた. 別の非一様性の原因にも対策が講じられた.すなわち,この遅延時間切り換え回路の出力の長さは,改善された回路でも切り替え状態によって10ピコ秒程度のばらつきは避けられない.このパルス幅は補助的な同時計数回路の計数効率に直接影響する.このためその前に整形されるが,通常のパルス整形回路では入力パルスの長さの違いが出力にわずかながら反映してしまうことが判明した.これを避けるため,出力パルスの長さが極めて安定な整形回路を,時間を決める素子として通常の低抗-コンデンサではなくディレイラインを用いることによって製作した. 以上の努力の結果,時間のビン幅の非一様性として10のマイナス5乗台の値が安定に得られる見通しができた.これは実験目的にほぼ適合する性能である.これらの努力により,電界放出源からの電子ビームによって目的の実験を遂行する準備はほぼ整えられた. この実験と並行して,回路を流れる電流の強度相関に関する研究も行っている.並列に接続された発光ダイオードからの光の強度相関を調べることによって,そのもととなった電流自身の相関を調べた.
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