研究概要 |
1.理論的手法と研究対象 分子の解離が起こる全エネルギー領域で、共腺配置の原子と分子の衝突を記述するSchrodinger方程式を量子力学的に厳密に解くために、質量でスケールしたJacobi座標を超球座標に変換し、連続無限個ある分子の解離状態を離散状態として取り扱う。超球座標で表されたSchrodinger方程式は2変数(ρ,ω)の偏微分方程式であるが、Discrete Variable Representation(DVR)方と差分法を組み合わせてこの偏微分方程式を数値的に厳密に解く。 本研究で対象に選んだ衝突系は相互作用ポテンシャルエネルギー曲面が十分な精度で解析式で表されているHe+H^+_2(υ*)とH+H_2(υ*)である。衝突配置は共線配置で、全エネルギー範囲は2〜10eVである。振動の始状態としてH_2の全ての振動状態について、振動遷移、原子の組替えと解離過程がお互いに強く影響し合う衝突動力学を研究した。H+H_2衝突系で精度の高い相互作用ポテンシャルを採用し、H_2の解離エネルギーより高い全エネルギー領域で、量子力学的に信頼できる方法を適用して衝突動力学を研究したのは、世界的に見て、これが最初の研究である。 2.研究成果 以下の項目について研究し、新しい知見を得た。結果の一部は既に公表されているが、多くの結果は〓めを公表する準備を進めている。 (1)He+H^+_2(υ*)衝突における振動遷移、原子の組替えと解離過程の確率の全エネルギー依存性 (2)He+H^+_2(υ*)衝突における振動遷移、原子の組替えと解離過程の確率のH^+_2(υ*)の振動の始状態υ*依存性 (3)He+H^+_2(υ*)衝突における同位体効果 (4)H+H_2(υ*)衝突における振動遷移、原子の組替えと解離過程の確率の全エネルギー依存性 (5)H+H_2(υ*)衝突における振動遷移、原子の組替えと解離過程の確率のH_2(υ*)の振動の始状態υ*依存性 (6)H+H_2(υ*)衝突における同位体効果 (7)原子と分子の衝突における2体と多体相互作用ポテンシャルエネルギーの役割
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