研究概要 |
近年,脳や生命現象などの振る舞いが,複雑系の物理学により定量的に表現されるようになってきた.生命システムは多くの複雑系がいろいろな階層構造をなし,さらに高次の複合系をなしている.一方,地殻を構成する岩石それ自体も複雑な系であり,地殻構造は不均質な複合系をなしている.本研究課題ではまず,時間的・空間的に連結する複雑な破壊過程の特徴を抽出し,複合材料の疲労破壊や不均質地殻の断層破壊の本質機構を解明する観点から,スケーリング則で支配された確率過程のモデルを新しく導入した.その結果;ランダムに破壊する断層パッチは非常に大きなサイズ効果を示し,そのサイズ効果を確率論的に表現する時間的・空間的スケーリング則が観測から自然に導かれた.それにより,地震活動のサイズ分布,空間分布,地震活動の長期記憶などが合理的に説明された.次ぎに,長期記憶を発生させる複雑系の基礎方程式をLangevin方程式をもとに複雑さをスケーリング則で取り入れ独自の表現を導いた.この方程式系がさらに複雑化し,高次の複合系を形成する場合を表現する新たなスケーリング則を明らかにした.この複合系を記述する新しいスケーリング則により,一般的な複雑系のスローダイナミックスからさらにゆっくりとした変動を示すスパースローダイナミックスの現象までを統一的に表現する理論を確立した.
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