研究概要 |
本研究では,2年間の研究期間で長期海底観測に最適な磁場センサーと観測方式を決定することを目的とする.磁場センサーには,成分を測定するものと全磁力を測定するものとがある.このうち全磁力センサー(たとえばプロトン磁力計)は,測定原理から長期間の安定性には問題がないのは明らかであるが,もともと磁場はベクトル量なので全磁力のみの測定は一部の情報を失うことを意味する.そこで,本研究では成分測定センサーによる長期地球磁場観測を目指した.前年度の研究により,長期地磁気3成分観測のためにはフラックスゲートセンサーをジンバルに吊った方式が最適であるという結論に達した.また,非磁性のジンバルも試作することができたので,この方程式による長期試験観測を行うことを本年度の目的とした.しかしながら,ジンバルに磁気センサーをのせて機械的な調整を行うのに手間取って9月まで要したため,試験観測は11月〜1月までの3ヵ月間となった.取得したデータは良好であり,センサーのジバル吊とセンサーを地中に埋設して温度変化を小さくすることにより3ヵ月間のドリフTが2〜3nT程度であることが確かめられた.さらに試験観測では,温度依存性を見積ることができ,3軸(水平,鉛直,偏角)ともに約1nT/℃であることがわかった.観測を終了したあとで,データ解析をすすめ,詳細なセンサーの温度依存性を明らかになり,海底における長期地磁気観測のための基礎資料となった.しかしながら,長期安定性についてのデータは,観測期間が当初の計画の半分の期間になってしまったことにより,充分に取得することができなかった本研究によって,海底の地磁気観測データを含めた球関数展開を行なうことが,太平洋地域など海域の地磁気永年変化の空間分布の解明に有効であることが示された.
|