研究概要 |
日没後,土佐湾からの海風が衰退し放射冷却によって大気境界層は次第に安定化するが,より早く冷却の進む山間部や山峡では一般風の弱い晴天時に冷気塊の蓄積が始まり,山地斜面から平野部へと冷気の移流(夜間下降流)が起こる。つまり,平野部及び沿岸部の安定大気層への冷気の流入が考えられ,実際に夜間のソーダー観測から冷気流が重力流の様相を示すことが確認された。さらに夕方から夜間にかけて土佐湾に流出する流れは,先ず平野部からの陸風であり,山間部で発生した冷気が後方から流れ込んで風向・風速の高度分布や熱量・運動量輸送に影響を与えていた(1997年4月26日の事例研究)。1997年4月から開始した山間部の観測点(佐岡)での気象観測から,先ず1.谷風の発生前に気温の急激な増加と,それと対応して顕著な蒸発量の変動が確認された。次に2.山地斜面流と谷筋(または谷底)に沿う流れが交互に冷気流に関与しており,佐岡からの冷気流流出時刻はほぼ日没時刻の季節変化と類似していた。そして3.頻度分布解析から冷気の流出の向きは北東方向から,夏には約24°C,冬には約7°Cの気温を示し,さらに夏に約16(g/kg),冬に約4(g/kg)の混合比を示した。4.平野部そして沿岸部への冷気の流出は佐岡からのものだけでなく北西方向からの冷気も流れ込み,場合によってはそれらの合流として観測された。
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