研究概要 |
本研究の目的は,日本海の拡大期のテクトニクスを再検討することである.そのため古第三紀の拡大初期から中新世の終了時までの本州弧のテクトニクスを4つの観点から検討した. 小断層解析法の再検討 小断層解析法は過去の地殻応力を推定する有力な手段だが,その方法論には近年著しい進展があった。そこで房総半島であらたに小断層データを取得し,方法論の再検討をおこなった(三野・山路,印刷中). 層序と地質構造からみた久万層群堆積期の造構運動 第三紀の西南日本弧を考える上で,瀬戸内区はデータが乏しい.そこで愛媛県の久万層群の層序と地質構造を再検討した.その結果,年代対比の改訂が必要なことがわかった(成田ほか,印刷中).また,従来曖昧にされていた久万層群と上位の石鎚層群とのあいだが傾斜不整合であり,久万層群が断層運動をともなってできた堆積盆を埋積したものであることがわかった. 古地磁気によるブロック回転の研究 日本海拡大時に東北日本弧は反時計まわり回転をおこなった.ところが新潟県最北部からは,反対回転をしめすデータが得られており,その詳細を地質構造とのあわせて理解する必要があった.そこで同地域で高密度の古地磁気用サンプリングおよび地質踏査をおこなった.その結果,時計まわりと反時計まわりをしめす岩体の分布を明らかにし(Yamaji et al.,1999),回転ブロックの境界に大規模な横ズレ断層を発見した. 日本海拡大時における日本弧周辺のプレート運動 上記の知見と従来のデータを総合し,日本海拡大時のプレート運動を復元した(Yamaji and Yoshida,1998).当時の日本弧は,いくつもの劇的事件を経験した.海洋性リソフエアからなるマイクロプレートが前期中新世に太平洋プレートから分離し,それが15Maに西南日本弧下に沈み込んで消滅したと仮定すれば,それらのテクトニック事件を説明できることを示した.
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