研究概要 |
始新統久万層群中の高度変成岩礫と現在露出している西南日本の高圧変成岩との岩石学的比較を行うため,三波川変成帯(関東山地,紀伊半島,四国)および三郡変成帯(鳥取県若桜)の地質調査と岩石試料の採取を行った.これらの岩石試料については,他の地域の変成岩(飛騨変成帯,ヒマラヤ片麻岩,キルギス超高圧変成岩)とともに,記載岩石学的研究,鉱物の化学組成のX線マイクロアナライザーによる分析を行った.とくに,久万層群中の高変成度礫と比較試料について,ざくろ石,ホルンブレンド(角閃石),緑れん石,白雲母などの鉱物について詳細な化学組成の分析,累帯構造の検討,反射電子線像観察,元素カラーマッピングを行い検討した.これらの結果,久万層群中に含まれるオレゴクレース黒雲母帯相当(ざくろ石角閃岩)の高変成度礫は三波川変成帯の五良津岩体,東平岩体などのテクトニックブロックが被った緑れん石角閃岩相の変成作用にきわめてよく似ていることが明らかとなった. 久万層群中の高度変成岩礫の40Ar/39Ar年代測定結果は145-180Maのピーク年代を示し,三波川変成帯別子ナップの90-100Maのピーク年代に比べて明らかに古い年代を示す。一方,久万層群中の高変成度礫に含まれるジルコンのフィッショントラック年代は65-70Maであり,別子地域の別子ナップの砂質片岩中のジルコンのフィッショントラック年代45-58Maに比べて有意に古い年代が得られた,このことは,40Ar/39Ar年代測定の結果とも調和的であり,すでに想定されていた久万ナップが,別子ナップに比べて早期に変成作用を受け,早期に上昇し,早期に地表に露出して削剥されたことが明らかとなった.
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