研究概要 |
本年度研究では,1.白亜系堆積岩の分析(四万十帯の砂岩・泥岩および陸成層),2.背弧の新生代第三系について分析用試料の採集と蛍光X線分析を行った.四万十帯については昨年分析をおこない,結果をまとめている.また,分担者ではないが砂岩の重鉱物組成について検討が進められており,島根大学において研究討論した.2の試料については研究協力者からボーリング試料の提供を受け風化の影響の少ない連続した試料をもとに検討を行うことが出来た. 1では外帯の四万十帯の白亜系と比較検討するため,同じ白亜系の陸成層の関門層群についても検討した.また,国際学術研究においても韓半島の白亜系慶尚層群を検討しており,西南日本の地帯群と大陸地殻を持つ韓半島の検討結果について比較検討した. 堆積岩の元素組成はprovenanceを構成する岩石の特徴に大いに関係を持つが,堆積作用や続成作用によっても大きな影響を受ける.特に風化過程や風化の程度はアルカリ元素やアルカリ土類元素に大きな影響を与える.本研究ではそれらの元素について,風化作用を評価する指標を用いて各地帯について検討した.第三系では後背地の火山活動の影響を反映して元素組成の変化が認められる.しかし,より上位の地層では大陸縁辺の堆積盆で特徴的な成熟した組成を示している.これは風化作用がより強く影響していること後背地に花崗岩が存在すること,などによる.堆積岩に挟まれる玄武岩などは堆積岩の元素組成にはほとんど影響を与えない.結論的に種々の堆積作用を受けた岩石では全岩の元素組成の検討は,風化作用や源岩組成,造構場の推定などにきわめて有効であると言える.
|