研究概要 |
本研究では,断層活動性評価の目的で行われる断層粘土のESR年代測定法の信頼性を向上させるために,断層粘土を構成する粘土鉱物固有のESR信号を使用したESRアイソクロン法を考案した.本方法は,粘土鉱物粒子に吸着している^<238>U及び^<232>Thの濃度が粒度によって変化することを利用するもので,生成時期が同じで粘度が異なる複数の粘土鉱物粒子を同時に用いることにより断層粘土のアイソクロン年代が得られる。本方法で問題となるのが断層破壊帯の放射平衡状態であるが,ICP-MSを利用して^<238>Uと^<232>Thの同位体比を調べることにより,放射性元素の閉鎖状態の判定が可能となった。 次に,断層破壊帯の放射平衡問題とも直接関連する地震発生前後のラドン異常現象に取り組んだ.^<214>Biのγ線強度異常が観測された野鳥平林断層露頭において採取した断層粘土の原子吸光及びICP分析を行い,^<238>U,^<232>Th,^<208>Pb各濃度及び同位体比からラドン異常の原因が断層粘土化に伴う放射性元素の濃集とラドンの解放にあることが明らかになった.また野鳥断層500m掘削コア試料のICP分析の結果,断層面近傍の断層粘土から^<208>Pb濃度異常が検出され,地下で大量の^<220>Rnガスが発生・上昇した痕跡を捉えることができた.さらにESR解析の結果,最近活動した断層面直上の断層粘土(幅0-3mm)が加熱作用を受けいることが判明した,Fe_2O_3やAl_2O_3濃度の他,^<133>Csや^<138>Ba濃度など,一部の元素に極端な増加および現象が見られることから,地震発生時に特定元素を含んだ高温流体が地殻深部から吹き上げてきた可能性が示された.1997年6月25日に発生した山口県北部の地震では,震源断層沿いのリニアメントにおいて,^<214>Biの高γ線強度が観測された.異常の結果は,ラドン異常が地下の断層粘土化と密接に関係していることを示唆している.
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