研究概要 |
海底底生生物を小さな区画(数m四方)で採集しても,生物個体はパッチ状に分布するため,群集全体を把握することはできない.一方,遺骸群集は,長い時間を経た死骸の集積となるので,群集全体を把握しやすいと言われている.特に貝類などの遺骸が死後も長く分解されない硬組織を持つ生物では,群集全体を把握できると言われている. 化石群集は遺骸群集なので,小区画の採集でも群集全体の把握が可能であると言われてきた.特に死後の移動を被らない自生化石群集では,同じ環境であれば,どこから化石を採取しても均質であることが予想せれていた.ところが,このことを検証した研究はほとんどない.化石群集の均質性を検証するため,高知県の唐浜層群穴内層の泥質砂岩から3ヵ所(1,2,3)のサンプリングを行い,化石群集の均質性を検証した.調査を行った池の谷の沢では,外側陸棚(水深約50m)と推定される泥質砂岩の同一層準が200mに渡って追跡可能である.採集地点1と2は120m,2と3は60m離れている.各地点で縦1〜2m,横2mの区画を設定し,ランダムな採集を行い,貝類の種構成を比較した.採集された貝類は25種979個体からなる.結果は以下のようになった. 1)各地点共最も優占する4種は同じ種からなる(Angulus vestarioides,Nassarius (Hinia) caeratus,Fulvia mutica,Acila (Acila) divaricata). 2)5番目に優先する種は,地点1,2でOblimopa japonica(地点1で,20個体,地点2で41個体)であったが,本種は地点3で1個体しか産出しなかった.地点3ではGarianomalaが5番目の優先種であった. 3)6番目に優先するのは,地点1と2で,Ammussiopecten praesignisで,地点3ではPaphia sp.であった. 結果,最も優先する4種については,各地点均質と言えるが,Oblimopa japonicaは,地点間に産出頻度の明らかな相違が見られた.
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