研究概要 |
秋田県大館市池内遺跡では約13,000年前の八戸テフラに覆われた森林・植生の復元と樹齢・年輪成長パターン解析を中心とした年輪年代学的検討を行った。その結果,森林組成はトウヒ属が80%,モミ属とカラマツ属がそれぞれ10%を占めること,トウヒ属の全年輪試料はすべてについてクロスデイティングでき、最終形成年輪の形成年の一致を認めた。また、十和田火山東方の同じ八戸テフラ下の埋没林で作成したトウヒ属の標準年輪指数とクロスデイティングでき、十和田火山東方の埋没林と同じ年に死滅したことが明らかになった。最終形成年輪の観察から,ある年の秋から次の春までの間に死滅したことが明らかとなり,死滅季節も一致した。このように,年輪年代学的方法の導入によって,同年・同季節の生態系を構造的に捉えることができ,数百kmに及ぶ森林の構造復元が可能であることを示した。 青森県西津軽郡西海岸における約25,000年前の森林・植生を構造解析するために,樹種・樹齢を検討した。大半はトウヒ属とカラマツ属であった。枯死埋積過程を復元するために産状記載と花粉化石群の検討を行い,急激な水位変動が原因であることを明らかにした。 西津軽郡車力村の完新世初頭の埋没林は、約7,000〜8,000年前のブナを主体とする温帯落葉広葉樹林であることが分かり,樹齢100〜150年の成長速度が著しく早い初期的ブナ林の構造を明らかにした。 長野県軽井沢町成沢の約13,000年前の浅間砂岩噴火による降下火山灰に覆われた森林・植生の構造解析のために南北10km範囲内の露頭調査を行った。その結果,トウヒ属を主体とし,カラマツ属・モミ属・マツ属を随伴するか,マツ属(ハイマツ)のみからなる森林構成が明らかになってきた。前者は微高地的環境において卓越し,後者は湿地的環境において卓越することが明らかになった。
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