研究概要 |
西南日本における後期中新世〜鮮新世の古植物相の変遷を明らかにするために,伊勢湾周辺地域の東海層群(愛知県知多半島の常滑層群豊丘累層および河和累層,岐阜県土岐市および笠原町の土岐砂礫層,岐阜県垂井町の庵芸層群)について,地質調査および植物化石の採集,同定を行った.東海層群の化石植物群は,現段階ではI〜IVの層準に区分される. 層準I:オオミツバマツ植物群(中新世後期) 土岐口陶土層,瀬戸陶土層から産出する化石植物群. 層準II:絶滅属は産出しないが,中新世要素を含む化石植物群(中新世末〜鮮新世前期) 豊丘累層,布土累層下部,岐阜県笠原町の土岐砂礫層から産出する化石植物群.中新世要素Pinus trifolia,Paliurus Protonipponicus,Parrotia pristina,Fagus stuxbergii,Liquidambar protopalmata,Populus sanbonsugiiを含む. この準層は那須(1972)の河和フローラのrangeを上位へ伸ばしたものであり,中新世要素の産出する特徴を付加することができた. 層準III:繁栄期のメタセコイア植物群に対比される化石植物群(鮮新後期) 庵芸層群下部から産出する化石植物群. 層準IV:消滅期のメタセコイア植物群に対比される化石植物群(更新世前期) 庵芸層群上部から産出する化石植物群. 庵芸層群下部と上部の境界,すなわち鮮新-更新世境界層準における第三紀型の分類群の消滅の他に,中新世末にも消滅イベントがある.さらに,鮮新世の中でも,常滑層群で見られたように,段階的に消滅しているように見える.
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