研究概要 |
東北日本弧第四紀火山フロント北部に位置する岩手火山とその内弧側に位置する秋田駒ヶ岳,同フロント南部の南蔵王,安達太良両火山で代表的試料を収集し、XRF法による主成分および微量成分分析,ICP法での希土類元素分析を行った。 本研究で提案したのは、マントル起源と信じられている低アルカリソレアイト系列マグマに着目し,1火山に共存する複数のマグマバッチの親マグマ組成特性の多様性から、垂直方向、あるいは時間経過の中での、マグマ源マントルの不均質性を見いだし、この差が沈み込みスラブから付加されたフルイドによる化学特性(マントル交代作用)と考えることである。 岩手火山では,ソレアイト質マグマバッチシステム(magma suite)が5系列識別され,各々が独自の親マグマ,進化過程をたどったことが判明した。南蔵王でもソレアイト質マグマバッチシステムが同一火山体内に少なくとも3系列識別された。うち1系列は同火山に共存するカルクアルカリ系列と化学特性が酷似する。秋田駒ヶ岳でも,ソレアイト質マグマバッチシステムが,少なくとも4系列識別され,それぞれ異なる初生マグマに由来することが明らかとなった。微量成分組成はまだ定量予定である。 親マグマにおける化学特性の多様性を検討すると、火山フロント下ではスラブ由来フルイドによりRb,Kが顕著に付加し、LILでもBaはごくわずかしか付加されていない事が推定される。また,東北日本弧フロント沿いに共存するソレアイト、カルタアルカリ両マグマ間の液相濃集元素特性の違いに,スラブ由来フルイドによるLIL元素の選択的付加度の違いが色濃く反映されている可能性がある事も支持される。今後,内弧側のスラブ由来フルイドの特性について検討を通じ,島弧横断方向でのスラブ由来フルイド特性の変化について,総合的に解釈できることになる。
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