研究概要 |
水,氷,水溶液,含水鉱物結晶,マグマなどの構造と物性をミクロレベルで理解し,広い温度圧力組成における挙動を予測するために分子シミュレーション(分子動力学法とメトロポリス・モンテカルロ法)が有効である.そのようなO-H結合を含む系の分子シミュレーション計算の実行のために,H-O結合に関わる原子間相互作用モデルの開発を行った.モデルはH_2O分子とその集合体(水,氷,蒸気)の諸性質を再現するように,分子シミュレーション法を用いて作製した.さらにクラスレート氷,高圧氷などに適用し,その有効性を評価した.モデルはクローン項,近接反発項,分子間力項,MOESE項,および水素結合をH-O-H_3体相互作用項からなる. マグマを模した高温高圧のSi-O-Na-H系にこのモデルを適用し,H_2O成分のケイ酸塩融体への溶解形態のミクロ描像を得た.さらに温度圧力に対する溶解形態の変化を計算し,既存のマクロなモデルとの比較し,地殻やマントルにおけるマグマや火山噴火前後におけるマグマ中の水の挙動のモデルを作製した. また,このモデルを用いて含水鉱物の構造と物性の再現を試みた.雲母族鉱物および粘土鉱物を対象として,上記原子間相互作用を基に,これらの鉱物の諸性質を再現できる多成分系原子間相互作用モデルを組み立てた.雲母構造におけるOH基の挙動,粘土鉱物における層間水と膨潤性などについて、精密でリアリスティックな再現性が得られ,これら鉱物の挙動の予測に十分有効性があることを明らかにした.
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