研究概要 |
本研究によって,岡山県備中町布賀の高温型スカルンに産する多くのホウ酸塩鉱物の産状及び物性を明かにすると共に,これらの成因について考察することができた. 1.ホウ酸塩鉱物の産状:布賀において,初生的に生成されたゲーレン石,スパー石スカルンは,含水カルシウムケイ酸塩鉱物,フッ素を含む鉱物などからなる多くの脈によって切られている.ホウ酸塩鉱物も一連の脈の一つとして,スカルンと結晶質石灰岩との境界に沿って産している.この脈は平均的には幅約10cmであるが,部分的に幅約3mの厚い部分があり,その中心部にはCaO-B_2O_3系の新鉱物であるtakedaiteが産し,周辺部には20〜50cm幅でCaO-B_2O_3-H_2O系の日本新産鉱物であるnifontovite,olshanskyite,frolovite,sibirskite,borcarite,新鉱物であるparasibirskiteなどが産していることが明かになった. 2.ホウ酸塩鉱物の物性:布賀のスカルンに伴う多くのホウ産塩鉱物について,光学的性質,硬度,密度,X線的性質,化学的性質,熱的性質および赤外吸収スペクトルなどの物性を明かにすることができた.本研究においてsibirskiteと化学的に同質異像の関係にある鉱物の物性を明かにし,これをparasibirskitとしてI.M.Aに申請した結果,平成8年1月に正式に新鉱物として承認された. 3.ホウ産塩鉱物の成因:ホウ産塩鉱物の産状,物性,共生する硫化鉱物から求めた生成温度及びSchafer(1968)らの合成実験のデータなどから,CaO-B_2O_3-H_2O系鉱物の生成は次のように考えられる。 (1)ホウ素を含む流体が母体の結晶質石灰岩と反応して,250℃前後の温度条件で初生的に無水の鉱物であるtakedaiteが生成した。 (2)その後のやや高温の条件での熱水溶液による変質によって,takedaiteから含水ホウ産塩鉱物であるsibirskite,parasibirskiteが二次的に生成された. (3)さらに後の低温の条件での熱水作用によって,olshanskyite,froloviteなどの含水量の多い鉱物に二次的に変質した.
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