研究概要 |
ナノ・ピコ秒パルス励起下での気相分子の動力学過程を断熱ポテンシャルや非断熱相互作用の大きさを入力として計算する方法を確立し、複数ポテンシャル系の高いエネルギー移動効率の定量的解明を目指した。まず、振動モード間のカップリング(カオス)の効果などを調べ、accepting modeなどの無輻射遷移の基本的な概念の検証を行なった。次に、三重項副準位の三つのポテンシャル面が磁場で結合する場合、中間ケース分子の項間交差にどのような影響を及ぼすかをシミュレートした。短い時間Δtの間で有効な時間発展演算子を初期波動関数に必要回数作用させるsplit operator法とSpectral Filter Lanczos法を結び付けて、光励起で生成した状態に含まれるすべての固有関数を求めた。固有関数より状態の時間発展を計算した。三重項の振動準位密度が増加するにつれ,消光の飽和が三重項の零磁場分裂に比べて小さい磁場で起こる磁場消光の効率が増す原因が振動モード間のカップリングにあることを明らかにした。中間ケース分子よりも準位密度の低い重水素化ピリミジンの0-0バンド励起の場合,磁場消光の効率は低い。回転準位によっては量子収率が増える場合もあり,準位密度の不足によるランダムな変化が観測された。このような小さな分子極限に近い状況は準位間結合モデルのシミュレーションで良く説明できた。また,ピリミジン時間分解発光スペクトルのフーリエ解析を新たに提案したウインドウ関数t^Vを適用して行った。通常のフーリエ変換よりもベースラインの低い解像度の高いエネルギースペクトルが得られた。新しいウインドウ関数微細なスペクトル変化が問題になる磁場効果の解析に威力を発揮する。
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