研究概要 |
最近、我々は1-セレノ-2-シリルエテン(1)と求電子性オレフィンとのルイス酸存在下での反応でケイ素の1,2-シフトを伴う[2+1]環化付加反応によりシクロプロパンが得られることを見い出した。この反応はこれまでに見られなかった新しいタイプの反応で合成的有用性の検討が待たれる。生成するシクロプロパンはセレン、ケイ素を含むいくつかの官能基で修飾されており、種々の官能基変換により有用な生理活性物質等への変換が期待される。 1. (1)とβ-カルボキシル基及びβ-アシル基置換メチレンマロン酸エステルとのZnBr_2存在下の反応でシス置換シクロプロパンを立体選択的に53-69%の好収率で得た。生成物を合成殺虫剤であるピレスロイドの有用な合成中間体に変換した。 2. (1)とメチレンマロン酸t-ブチルエステル(2)とのZnBr_2又はZnI_2存在下の反応でシクロプロパンとシクロブタンの約2:1混合物として84-91%の収率で得た。反応生成物シクロプロパンをアミノシクロプロパンカルボン酸であるコロナミン酸および2-アルキル置換誘導体、2,3-メタノアスパラギン酸誘導体への立体選択的な変換に成功した。この合成ルートは2-置換アミノシクロプロパンカルボン酸の有用な一般的合成法となり得る。 3. (1)とホスホノアクリル酸エステルをSnCl_4存在下で反応させ、シクロプロパンを95-96%の高収率で立体選択的に得た。反応生成物シクロプロパンを生物学的に興味が持たれるアミノシクロ口プロパンホスホン酸誘導体へ立体選択的に変換した。すなわち、生成物シクロプロパンをNaIO_4と反応させアルデヒドとし、NaBH_4でアルコールとし、続いて加水分解した後酸性にし、ラクトンとした。ラクトンをアンモニアと反応させたのちエステル化し、生じたアミドをHofmann転位でアミノシクロプロパンホスホン酸誘導体へ変換した。
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