研究概要 |
近年、微生物の代謝産物の中から大環状チオストレプトン系抗生物質が次々と発見され、単離・構造決定されている。それらはいずれもピリジン環を中心にし、主としてチアゾールアミノ酸やオキサゾールアミノ酸およびデヒドロアミノ酸などの異常アミノ酸で構成された特異な構造をしている。また、そのほとんどがグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を示し、他の既存の抗生物質との間に交差耐性は認められず、耐性菌も存在しないことが明らかになっている。われわれはこの一連のチオストレプトン系抗生物質の全合成および構造活性相関に興味を持ち全合成を行うこととした。すでに、ノシヘプチド、ミクロコッシンP、A10255G,Jの環内鎖状部分骨格の合成については報告している。 この2年間で多くのチオペプチド系抗生物質に含まれる2,3,6-チアゾール三置換ピリジン骨格の一般的合成法を確立した。特にミクロコッシンPおよびP_1については種々のフラグメントとの縮合および環化反応の条件を検討し、この種の抗生物質としては初めて全合成に成功した。さらに、この知見をもとにGE2270Aの全合成に着手し、ピリジン環を含む主要部分の合成にも成功した。また、A10255G,Jやベルニナマイシン類に含まれる2-オキサゾールピリジン骨格の構築についても検討を重ね、その誘導体を合成した。一方、ノシヘプチドや最近発見されたグリコチオヘキシドαの中心骨格である四置換ピリジンは3-シアノ-6-メチルピリドンや3-ブロモ-5-ヒドロキシピリジンを出発原料にして効率よく合成した。これらの知見は他の一連のチオストレプトン系抗生物質の全合成にも役立つものと確信する。
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