研究概要 |
本研究では、分子内へのヘテロ原子(N,S,Se,Te,Sn)同士が空間をとうし相互作用できる鎖状および環状化合物を設計、合成し、ヘテロ原子間相互作用により安定化、生成する新規なhypervalent(超原子価)化合物の単離、構造決定を行いその化学的挙動を明確にした。結果について以下に略述する。 分子内3中心相互作用による高配位化合物の合成を目的に、3個のヘテロ元素を含む環状化合物トリスセレニドを合成した。この環状トリスセレニドはCHCl_3中ではtwin-chair形であるが、H_2SO_4やNOPF_6で酸化すると容易にtwin-boat形になり、セレヌランジカチオンを生じる。一般にセレヌランはアピカル位が電気陰性基である、酸素、ハロゲンから成るが、セレヌランジカチオンはアピカル位にセレノニウムカチオンを持つセレヌランで、Se-Se-Se結合をもつジカチオンの存在を証明した最初の例である。更に、このセレヌランジカチオンのX線結晶構造を明らかにし、多中心結合の存在を証明した。一方、N-Se-N結合を有するジアザセレヌランを初めて合成し、その固体構造をX線結晶構造解析より明らかにし、溶液中での構造については、^<15>N(^<15>N=40%)で標識したジアザセレヌランを合成し、その^<15>N-NMRスペクトルを測定したところ、セレン原子と窒素原子とのカップリングが観測され、セレン原子と窒素原子との複合超原子価結合の存在を明らかにした。
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