研究概要 |
1.架橋チオラートにより連結された配位不飽和な2つのRu中心をもつ一連の錯体[Cp^*Ru(μ-SR)_2RuCp^*](Cp^*=η^5-C_5Me_5)は窒素固定酵素基質であるヒドラジンのアンモニアと窒素分子への不均化反応を触媒的に進行させること、その反応速度はチオラートの置換基Rの種類に大きく依存することを見出し、また本反応が新規な配位様式をもつ二核ジアゼン錯体を中間体として進むことを明らかにした。 2.天然の窒素固定酵素の活性部位がMoおよびFeを含むスルフィドクラスター構造をもつことをふまえ、多様な新規遷移金属-硫黄クラスターの合成を行った。得られた骨格としては例えば、W_4S_6,Mo_2Pd_2S_4,Ru_2(S_2)(SR)_2,Ru_2M(S_2)S_4(M=Mo,W),Ru_3S_2,Ru_2MS_2(M=Rh,Ir),Ru_4S_4,Ru_2Pd_2S_2,Ru_4MS_4(M=Fe,Co,Ni)などがあげられ,それらの構造の詳細を明らかにするとともに、それらの多くに用いた新しい合成法が、いずれも一連の遷移金属-硫黄クラスター合成のために一般性のある有用な方法であることも示した。 3.二座ホスフィンを配位子とするMoおよびW錯体trans-[M(CO)(DMF)(dppe)_2](dppe=Ph_2PCH_2CH_2PPh_2)はDMFの解離により生じた空のサイトで、窒素と等電子構造をもつ一連の末端アセチレン類と反応し、C-H結合切断によるヒドリドアルキニル錯体またはビニリデン錯体を与えることを見出した。
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