研究概要 |
1.錯イオン対結晶での光電子移動速度の測定。 発光性錯体試料としてRu(dcbpy)_3^<4->[dcbpy=4,4'-dicarboxy-2,2'-bipyridine],Ru(CN)_4(bpy)^<2->,Ru(bpy)_3^<3+>等の誘導体を中心に、対錯イオンを電子移動が起き得るようなCo(L-L)_3^<+3->[L-L=en,NH_3,bpy],Co(dcbpy)_3^<3->等として組み合わせた9種類の複錯体の結晶を合成し、発光寿命の減衰(消光)を単錯体のそれと比較することにより電子移動速度を推定した。いずれの複錯体結晶も良く消光し(5.5x10^6-2.8x10^8s^<-1>)、その速度は弱い温度依存性を示した。かさばった配位子を有するCo(III)錯体の場合では、複錯体での電子的交換相互作用の大きさは大変小さくなり、さらに酸化還元電位との相関から結晶での外部再配列エネルギーも大変小さいことが明らかになった。 また[Ru(NH_3)_5X]_4[M(CN)_6]_3(H_2O)_x(X=pyridine derivartives,M=Fe,Ru,Os)の単結晶の合成は成功した空気中で風解が速く、単結晶での近赤外部の光学的金属間電荷移動吸収スペクトルの測定はうまく行かなかった。 2.結晶状態での過渡吸収測定は現在のところ大変むづかしい技術であるが、フェムト秒Ti:サファイアレーザー(150fs,75MHz,500mW)を自作し、微弱光励起での高繰り返しポンプ・プローブ法の測定システムを構築することができた。これにより溶液中イオンペア複錯体や複錯体単一結晶での高速逆電子移動速度を吸収法により直接測定できる可能性が高まった。
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