研究概要 |
軸性不斉骨格1,1'-binaphthylを対称的な位置に導入した光学活性なD_2対林の18員環二重螺旋クラウンチオエーテル4座配位子Binaph_2Me_4[18]S_4および立体配座によって一重あるいは二重螺旋をとる1,1'-binaphthyl 軸性不斉骨格を1つ有する17員環クラウンチオエーテル4座配位子BinaphMe_6[17]S_4、更には13員環クラウンチオエーテル3座配位子BinaphMe_4[13]S_3をそれぞれ(R)-および(S)-1,1'-binaphthaleneー2,2'-dithiolからエナンチオ選択的に高収率で誘導し、それらの構造をX線結晶構造解析により解明した。 これら光学活性クラウンチオエーテルBinaph_2Me_4[18]S_4、BinaphMe_6[17]S_4およびBinaphMe_4[13]S_3を配位子とするロジウム(I,III)錯体、ルテニウム(II)錯体および白金族(Pd(II),Pt(II),Ni(II))錯体を合成し、Binaph_2Me_4[18]S_4を配位子とするSq.planarおよびOh錯体ではいずれも配位子のBinaph_2Me_4[17]S_4の構造に起因してD_2対称の二重螺旋をとるのに対して、BinaphMe_6[17]S_4を配位子とするOh錯体では中心金属やaxial配位子によりその構造が変化し、配位子の硫黄原子の不対電子の方向がequatorial面に対してそれぞれup-up-up-downとなる一重螺旋構造とup-down-up-downとなる二重螺旋構造をとることを見い出した。これらヘリカルなロジウム(I,III)錯体を触媒とするケトン類の不斉ヒドロシリル化反応および白金族錯体による不斉グリニャ-ルカップリング反応を検討し、これらの硫黄ヘリケイトが不斉触媒能を有することを明らかにするとともに、不斉識別能に及ぼすヘリカル不斉場を形成する軸不斉骨格の数や環員数の効果について検討した。また、これら光学活性クラウンチオエーテルを配位子とする銅(I)錯体では配位子の特性に起因して、Binaph_2Me_4[18]S_4は3座配位子として中心Cu(I)金属に配位し歪んだTd錯体を生成し、BinaphMe_6[18]S_4配位子ではTrigonal bipyramid錯体を与えること示すとともに、これらヘリカルな銅(I)錯体を触媒とする不斉シクロプロパン化反応についても検討した。
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