研究概要 |
我々はこれまで,シクロペンタジエニル基(Cp)を有するメタラジカルコゲノレン錯体[CpM(E_2C_2R^1,R^2)]の合成法の開発を始め,それらの構造,反応性について研究を進めてきた。その結果,メタラジカルコゲノレン環は相反する反応特性,すなわち不飽和性と芳香族性が微妙なバランスの上に共存している興味ある化合物群であることを明らかにしてきた。不飽和性に基づく代表的な反応例としてはジアゾ化合物の金属-カルコゲン結合への付加体生成反応が注目される。本研究により、これら付加体が熱、光および電気化学的に解離する挙動およびジアゾ化合物との反応で生成するアルキリデン付加体のメタラチイラン環がプロトン酸(HX)やルイス塩基(P(OMe)_3)との反応により結合の解裂を伴う構造変化をすることが明かとなった。HXでは金属-C結合(M-X,S-アルキル体生成)、P(OMe)_3では金属-C結合(Sイリド付加体生成)と金属-S結合(環拡大による6員環付加体生成)との二とうりの解裂パターンを示した。さらに、HXとの反応ではsyn型構造とanti型構造(Co-XとS-alkylとのジチオレン環に対する関係)が存在し、その存在比はXの電子的効果と立体的効果に依存することが^1H NMRにより明かとなった。しかし、溶液中で二種異性体が見える系であっても、単結晶X-線構造解析ではパッキング力の関係かanti型構造のみしか得られなかった。かさ高いX(OCOCF_3,I)とS上のalkyl基がかさ高い(CH_2SiMe_3,COOEt)組み合わせの場合、溶液中では一種類の三元付加体しか観測されず、その単結晶X-線構造解析での構造はsyn型構造であった。また、ハロゲン(I_2,Br_2,Cl_2)との反応でも、HXと同様にハロゲンがヘテロリティクに解裂し、Co-X,S-CXRを有する三元付加体を生成した。反応性はI_2<Br_2<Cl_2であった。
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