研究概要 |
1.ジヒドロピロロ[3,2-b]ピロールの合成並びに性質 ジヒドロピロロ[3,2-b]ピロールは3,6-ジ-tert-ブチル及び3,6-ジエトキシカルボニル体をそれぞれのテトラヒドロ体をDDQ酸化して合成した。これら、2種のジヒドロピロロ[3,2-b]ピロールの反応性は一様ではなく、tert-ブチル体は臭素化あるいはニトロ化等の親電子反応条件下で主に酸化反応が優先し、通常の条件では容易に目的とする官能基導入が困難であった。これは、この新規な10π電子系芳香族化合物が極めて小さいイオン化ポテンシャルを示し、強力なπドナーであることを示唆している。このため、アセチレン誘導体とは室温で反応し、π共役系を拡張した2,3-ジビニル誘導体を高収率で与えることを見いだした。一方、エトキシカルボニル体は電子吸引性置換基の導入効果により、酸化体を与えることなく、2,3-ジブロモ体を単離することが可能であり、Yamamoto法による非ドープ型のポリマーを得るための極めて有用な前駆物質を得ることが分かった。また、3,6-ジ-tert-ブチル体とクロロスルホニルイソシアナ-ト(CSI)との反応生成物からビロロフルベン型ケテンが生成することを見いだした。これは、これまでの脱炭酸を伴うケテン生成反応に比べて極めて穏和な条件で進行し、反応機構面での興味に加えて環状二量体や環状オリゴマーの合成への新展開が期待される。 2.ポリピロロ[3,2-b]ピロールの合成 これまで、金属塩を触媒とするKovacic法によるポリピロロ[3,2-b]ピロール合成を主体としてきたが、得られるポリマーは重合度がそれほど大きくない点、化学的評価を行いにくい点が欠点であった。本研究の成果によりYamamoto法により非ドープ型のポリマーを得る目途が立ち新規な機能性素材としてのジヒドロピロロ[3,2-b]ピロール有効性がさらに高まった。
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