研究概要 |
我々が発見した,銅イオン交換ゼオライトによる窒素吸着特性は,この試料を,窒素の分離,固定,活性化の触媒として利用できる可能性があり,大変興味深い重要な研究テーマであると考える.本研究では紫外線励起を利用した蛍光スペクトル測定,XAFS,IR,ESRスペクトル測定および吸着熱測定によって,窒素を強く物理吸着するイオン交換サイトの状態を明らかにしようとした,特に,窒素の吸着サイトとしてのゼオライト中の銅イオンの構造的・電子的特徴を分子レベルで解析することを目的とした. まず,Cu(I)と選択的に相互作用すると考えられるCOをプローブ分子として用い,Cu(I)の状態を解析した.その結果,この試料を熱処理することによって,ゼオライト中にCu(I)種が形成されることを明らかにした.さらに,1価の銅イオンによる発光スペクトルへの窒素吸着の影響を調べ,窒素の吸着サイトを検討した.窒素の圧力の増加と共に,470と540nmの発光バンドの強度が減少し,同時に540nmのバンドは550nmへシフトする.さらに窒素の圧力を増加(1.18kPa付近で)させると,すべての発光は消光した.この事実は1価の銅イオンが窒素の吸着サイトであることを示している. 赤外線吸収スペクトルのデータから,COに対する吸着サイトが3種類存在し,吸着CO種が2151cm^<-1>に吸収バンドを与えるサイトがN_2吸着サイトとして有効であることも明らかにした. 銅イオン交換ZSM-5型,モルデナイト(M)型,Y型ゼオライトと窒素分子との結合に関するデータ(吸着熱と波数との関係)から,銅イオン交換ZSM-5,M,およびY型ゼオライトと窒素分子との結合において,σ結合が重要な役割をしていることが推定できた. これらの結果から,ゼオライト中で安定化された1価の銅イオンが特異な吸着性を有すること,ZSM-5中には銅イオンに対する交換サイトが少なくとも3種類あることが明らかになった.さらに,吸着熱と吸着分子の赤外吸収スペクトルのデータから交換イオンと吸着分子の結合状態について重要な知見を得ることができた.
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