研究概要 |
1)キラルなねじれ型アミドの合成 4-位に不斉炭素を有するアミドC(O)-N結合がねじれた4-アルキル-3-ピバロイル-1,3-チアゾリジン-2-チオン類を合成し、13CNMR,IRスペクトルによりねじれの程度を確認した。 2)ラセミ体二級アルコールの速度論的光学分割 合成したキラルアシル化剤を用いて二級アルコールの速度論的分割を試みた。溶媒としてヘキサンの様な無極性溶媒を用い、中性条件下で二級アルコールと加熱すると、反応はスムーズに進行し、対応するピバレートが高収率で得られた。これらのエステルの絶対配置および光学純度を調べた結果、いずれも50-84%eeの光学純度で(S)体が優先的にアシル化されることが明らかになった。一方、塩基としてメチルマグネシウムブロミドを用いた時、中性条件下とは逆の立体選択性で(R)体が優先的にアシル化されることが明らかになった。これは、中性条件下の場合は、アミド基がねじれた配座をとっているのに対し、塩基を用いた場合はアミド基のカルボニルとチオカルボニル基がマグネシウムに配位し、平面構造を取るためと考えられる。 3)meso-ジオールの非対称化 meso-ジオールの非対称化は上述の速度論分割とは異なり、理論的には100%目的物に変換可能であり合成的に有用な方法である。そこでmeso-ジオールについて非対称化を検討した。種々のmeso-ジオールに対し、上述の速度論分割と同様な方法でアシル化を行った。その結果、基質により選択性は大きく異なるが、90%ee程度の高い選択性が得られることが明らかになった。 4)13C-15N NMRカップリング定数とねじれとの相関 アミド基のねじれの程度を表すパラメーターとして、13C-15N NMRカップリング定数が有力であると考え、15Nで標識したねじれ型アミドを合成し、13C-15Nカップリング定数の測定を行いねじれ角との相関を調べた。その結果、ねじれ角が大きくなるに従い、カップリング定数は小さくなることがわかった。これらの結果はアミド結合のねじれを調べる有力な方法となり得る。
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