研究概要 |
生体内反応を規範とする選択的合成反応の開発を目的として、生体内で多くの酸化還元反応に関与する補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)のモデル化合物となる、面性不斉をもつパラピリジノファンを設計し、その合成ならびに光学分割を行った。また、それらおよびその類縁体を用い、α-ケトエステルであるべンゾイルギ酸エチルの不斉還元について検討を行った。 まず、2,5-ビス(プロモメチル)-3-エトキシカルボニルピリジンと1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンから、ジチアファン(収率51%)を合成した。また、得られたジチアファンを酸化し、対応するジスルフオンとしたのち(収率94%)、高真空下熱分解反応により、8-エトキシカルボニル[2]パラシクロ[2](2,5)ピリジノファンを合成した(収率53%)。得られたシクロファンの光学分割について、種々検討を行ったところ、キラルな固定相をもつカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより光学分訳できることが分かった。また、光学活性1-フェニルエチルアミンのアミドとし、ジアステレオマーとして分離できることも分かった。分割したエステル基をもつピリジノファン、およびフェニルエチルアミド基をもつピリジノファンを、ピリジニウム塩に変換したのち、亜ジチオン酸ナトリウムにより還元し、ジヒドロピリジン誘導体を得た。これらを用い、べンゾイルギ酸エチルの還元を試みたが、現在のところ、目的とする光学活性マンデル酸エステルは得られていない。また、同様の手法により、ジヒドロピリジン環のひずみが小さい、8-エトキシカルボニル[3]パラシクロ[3](2,5)ピリジノファンおよびそのアミド誘導体についても合成を行った。今後光学分割ならびにジヒドロピリジンへの誘導、還元反応について検討を行う。
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