研究概要 |
ガリウム(III)の他の金属イオンからの分離を目的として、抽出試薬に長鎖8-キリノール誘導体(2-methyl-5-hexyloxymethyl-8-quinolinol(HMO_6Q),5-hexyloxymethyl-8-quinolinol(HO_6Q)を用い、酸性溶液からのガリウム(III)の二酸化炭素(臨界点:31.1℃,7.4MPa)による超臨界流体抽出におよぼす温度や圧力の影響、抽出錯体の組成、抽出セルのジオメトリー、さらには回収に関する基礎検討を行った。ステンレス製の抽出セル(容量100ml)にガリウム(III)溶液5mlとHMO_6Qのヘプタン溶液5mlを採取し、セルを一定温度に加熱した。それに予めシリンジポンプで加圧した二酸化炭素(7.5-15.0MPa)を注入し抽出を行った。超臨界流体によるガリウム(III)の抽出率は圧力や温度によって著しく異なり,HMO_6Qでは51℃及び67℃で圧力とともに抽出率は増大するが,40℃では逆に圧力の増大とともに抽出率は減少する。抽出される錯体の組成をスロープ解析よりGa(MO_6Q)_2(OH)(H_2O)と決定された。HMO_6Qによりアルミニウム(III)(10^<-5>M)とガリウム(III)(10^<-5>M)の混合溶液中からガリウム(III)の選択的抽出分離が達成された。更に、抽出率は、圧力や温度等の反応条件が一定でも抽出セルのジオメトリーによって変化することが明らかになった。 以上、本研究では、キレート抽出試薬によるガリウム(III)イオンの二酸化炭素超臨界流体への選択的分離の分子設計に関して極めて意義のある知見が得られた。超臨界流体を用いる抽出法は、地球環境の観点から有機溶媒を用いる液一液抽出に代わる分離法として今後発展が期待される。
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