研究概要 |
(i)グルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白が三種のアゴニスト(NMDA,L-グルタミン酸,LーCCGーIV)に対して示す化学選択性を,binding assayではなく,より生理的条件に近い指標(チャンネルを透過したイオンの全数)を用いて評価することを可能にした,すなわち,グルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白の化学選択牲の評価を.同一膜を用いて評価することにより,膜に包埋したレセプター数に依存しない新しい化学選択性の評価法を提案した(Biosensors&Bioelectronics). (ii)テトラフェニルホウ酸などのアニオン性サイトと種々のイオノフォアを同時に包埋した脂質二分子膜は,膜抵抗を低下させ,電位測定の確率を著しく高めることを見い出した.従来,膜が作成できたにもかかわらず,膜抵抗が高いため(100ギガオーム以上)に約60%の確率でしか電位測定ができなかった.しかし,本研究では.電位応答型脂質二分子膜センサーを定量的レベル(100%の測定確率)に高めることができた.更に,アニオン性サイトと種々のイオノフォアを同時に包埋した平面脂質二分子膜はアルカリ及びアルカリ土類金属イオンに対して常にNernst応答を与えることを見い出した.これにより,定量的脂質二分子膜センサーの可能性が拓かれた(Ana1.Sci.). (iii)脳のNMDAサブタイプのGluRにはアミノ酸配列の相同性の違いに基づいた4種類の分子種が存在する.NMDAレセプター分子種のうち最も脳内に広く分布する11分子種のみを発現したCHO(chinese hamster ovary)細胞から単離したεl/ζ1 NMDAレセプター分子一個を平面脂質二分子膜中に包埋し,総イオン透過量に基づいてアゴニスト選択性を評価した.εl/ζ1分子種1分子が示した1秒間当たりの総イオン透過量は,異なる膜間においてもよい一致を示し,εl/ζ1分子種に固有の値としてのアゴニスト選択牲を定められることを見出した.得られた選択性は,(i)の場合と同様に,εl/ζ1分子種とアゴニストとの間の結合能と比べて著しく縮まっていた.また,εl/ζ1ーNMDAレセプターの情報変換の効率はL-CCG-IVの場合にL-グルタミン酸及びに比べて,1.4倍大きかった.(投稿中).
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