欠損型ポリ酸錯体をホスト、希土類元素をゲストとする錯生成反応により水-有機溶媒層の界面において希土類元素を捕捉することを目的とした。本研究では、水-有機層界面で特異的に濃縮生成する欠損型ポリ酸錯体の欠損部位の構造や電荷密度に及ぼす酸素酸イオンの種類や電荷の効果が重要となる。まず、欠損型ポリ酸錯体の生成機構および生成条件を確立するための基礎的検討を行った。欠損型錯体は種々の構造性を有する酸素酸イオンを縮合ポリ酸イオンが取り込むことにより生成するため、縮合ポリ酸イオンのキャラクタリゼーション、存在条件の確立および酸素酸イオンの構造性と生成する欠損型錯体の構造性との関連性の確立が基礎となる。水溶液中における各種縮合モリブデン酸イオンの生成条件をラマン分光法により詳細に検討した結果、計7種類の縮合ポリ酸イオンの生成条件を明らかにし、それぞれの化学種の合成条件を確立することができた。さらに、従来の4配位の酸素酸イオンでは欠損型錯体の種類が極めて限られているため、今回、3配位の亜リン酸イオンおよびピロリン酸イオン含有ポリ酸錯体の溶液化学的研究に取り組み、これまで知られていないタイプの欠損型錯体を合成単離するとともに、それらの錯体の生成条件を確立し錯体間の変換機構を解明するという成果を得た。これらの成果を基に、イオン移動ボルタンメトリーを用いて希土類含有錯体の生成条件および生成機構の解明、錯生成に基づく希土類元素の捕捉へ応用するための基礎研究を急いでいる。
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